大伴昌司の口癖
彼は株式投資をかなり熱心にやっていた、と思われる。
実家の敷地に4軒長屋の高級アパートを20代の若さで自分の資金で建てる。その資金は株で儲けたのである。
だから、暇があればトランジスタラジオから流れる株式情報に耳を傾けていた。
こういう算盤高い彼の性癖を、SF作家たちは大伴家持(いえもち)とあだなをつけてからかったそうだ。
昨日、少年マガジンの巻頭図解班の4人に集まっていただいて、当時の大伴の仕事ぶりを5時間にわたって聞いた。面白い話が山ほど出てきたので、いずれ稿を改めて書くことにするが、その中の忘れられないエピソードを一つ書いておく。
編集するときの大伴の口癖は何ですかという問いに。
「アイディアをひねり出すとき、大伴さんは『人の行く裏に道あり花の山』とよく口にしていましたよ。これって株屋さんの中で使われることわざだそうです。」と小島香さんが懐かしそうに話してくれた。
これは正確には「人の行く裏に道あり花の山、いずれを行くも散らぬ間に行け」という千利休の言葉だが、今では株屋さんの世界で金言として前半部分が使われている。
株式について私は詳しくないのだが、投資のコツの一つとして人のやらないことをやると「儲け口」があるものだという意味であろう。大伴も株の商いを覚えるなかで、こういう地口を覚えていったにちがいない。
しかも、この“ことわざ”は株だけでなく、図解の企画を考案する際にも役立ったのだ。
少年マガジンの誌上で彼が手がけた図解はおよそ300。それが関わったジャンルの幅は驚異的だ。「情報社会」「大空港」「疎開」「劇画入門」「トイレット入門」「深夜放送」「CM」等など、まさに何でも在りだ。
この豊富なアイディアを支えた精神は、「「人の行く裏に道あり花の山」であった。誰も見向きもしないこと、どんなことでもテーマになる、ならないものはないと大伴は確信をもっていた。その信念はともに働いた若い編集者、田中利雄、高橋忠義、小島香、金沢忠博、に深い影響を与えていくのである。
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