新しい火傷(やけど)
「昨日、彼女と別れました」と、その若い友人は告白した。
会ったときから、何か変だなと思っていたら、そういうことだったのだ。彼女とは4年付き合ったらしい。彼が苦しいとき悲しいときもよく支えてくれたそうだ。そんな大切な人と別れるとは余程のことだろう。詳細は知らない。聞く気もない。
自分の若い日を思い出した。私も大学を出て2年目に別れを経験した。その苦しみはかなり長く続いた。若い友人の悲しみがよく分かる。(という気がする)
で、友人にこんな話をした。
別れて3年ほど経った頃、私は敬愛する作家とそのパートナーを連れて思い出の金沢へ帰ったことがある。私が大学生活を送り、その女(ひと)と出会った町である。
浅野川沿いにあるお茶の師匠宅へ伺って、したたか酒を飲んだ。普段は歌など歌ったことのないその作家が歌謡曲などを口ずさんだ。いい気持ちで酔っ払い、風に吹かれて川沿いにホテルへ帰って行った。途中、気がついたら別れた女の家の前にいた。無性に懐かしかった。酔っていたから門柱にもたれながらぐずぐず泣き言を言った。
すると、その作家が私に大きな声でどなった。
「火傷(やけど)の跡は、新しい火傷で消すのだ」
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