算術
大伴昌司宅へ行ってきた。東急多摩川線の矢口の渡しが最寄の駅だ。駅を出て汗をぬぐいながら池上の住宅街を8分歩く。
あるアパートの中から母親とおぼしき怒鳴り声が聞こえてきた。
「早く、宿題をやってしまいな。今日は何日だと思っているのよ」
奥で男の子が口答えをしたようだ。また母の声が高まる。「ぐずぐず言うんだったら、お父さんに言いつけるよ。」
やりとりを聞いていて思わず笑った。まるで西東三鬼の句そのものの世界だ。
「算術の少年しのび泣けり夏」
たしかに小学生の頃、夏休みが終わりに近づく8月の末になると気が重かった。日記だってところどころしか書いていないから、慌てて追加を書かなくてはならない。天気は晴れだったか雨だったか分からないからどうしようと悩んだり、書くことがないから××へ行きましたばかりの文章だったり、ふて腐れて鉛筆の端をがりりと噛んだ。
算数は本当に嫌いだった。高学年になると「鶴亀算」とか「通過算」というのがあった。今でも電車が鉄橋を渡るとき、この電車が渡るというのは先頭が橋に入ってから最後尾が橋を抜けたまでを指すのだ、と言い聞かせる自分がいる。こんな計算は方程式を使えばすぐ解けるのに、わざわざややこしい解き方をやらされたのだ。
三鬼という御仁は本当に面白い人だ。月並みのことを奇怪な言葉で表現したり、その逆であったり。私は彼の「水枕がばりと寒い海がある」が気にいっていて、このブログの号に使っている。
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