文化は響きあう
フィルムノワールの名作「歩道の終わる所」を見た。製作は1948年、私の生まれた年だ。監督は『ローラ殺人事件』で注目されたオットー・プレミンジャー。ユダヤ系ドイツの移民だ。この頃、フリッツ・ラングらドイツからやって来た人物がハリウッドに活力を与えている。
フィルムノワールとは「暗黒映画」と呼ばれ、1930~40年代にかけてハリウッドで量産された。映像も暗い色彩のモノクロで、物語も犯罪、刑事、ギャング、探偵、殺し屋といった暗い題材が多い。こういうジャンルとして見たわけではないが、これまでにも「マルタの鷹」「三つ数えろ」などはハンフリー・ボガードらが活躍するハードボイルド映画と認識はしていた。
近年、フィルムノワールが話題になっていると聞いてはいたが、30~40年代の暗黒スタイルをもった映画群としてジャンル的視聴をすると、いろいろなことが分かって面白い。
映画史的に言うと、1940年代のフィルムノワールは、その後50年代のフランス、ヌーヴェルヴァーグに影響を与え、70年代のドン・シーゲルの「ダーティハリー」に影を落とす。テレビ映画にも影響は及ぶ。今再放送されている「逃亡者」もその流れだろう。日本では東映の深作欣二や中島貞夫らの実録ものに及んだ。代表が『仁義なき戦い』である。さらに、たけしの「HANABI」にも広がるだろう。そして、そのたけしの映画は逆にアメリカのタランティーノに反射するのだ。
文化(カルチャー)はまさに響きあっている。
大伴昌司の仕事も、そういう響きあう文化現象として見たらどうなるであろうか。
アステカの石像やディズニーやアメリカの進駐軍の文化映画に影響された大伴昌司が、円谷怪獣の設定や図解を作り、その影響が今アメリカのサブカルチャーに広がっているという構図。まだ、きちんと検証されていないが、なぜかワクワクするものを感じる。
明日の「大伴シンポジウム」のために、資料を整理している。一つ大きな発見があった。ウルトラマンのカラータイマーの3分間という設定は、どうやら大伴が考えたようなのだ。本編には一度もそういう説明はないのだが、彼は少年マガジンの巻頭図解でその設定を作り上げていたのだ。「設定」――このオタク文化の華を大伴は誰よりも早く発見している。
しかも、この放送が始まる前にである。
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