落雷
雷がすごかった。ベランダから眺めていると、相模の海の上に矢継ぎ早に電光が走る。
およそ1時間、夏の空をゴロゴロとカミナリが走り回っていた。
日本語のカミナリも神鳴りに由来するとされる。
稲妻。雷鳴が多い年は豊作だということから、この言葉が生まれたと聞く。
子供の頃落雷を見たことがある。たしか梅雨末期だった。ざあざあと大粒の雨が降りしきる中だった。雨戸を締め切り、その小さな窓から外を眺めていた。弟は背が低くて見えないとぐずったので、抱っこして窓の外を私は見せようとした。
家の裏はずっと田んぼでその向こうに国道8号線が走っていた。車も人影もなかった。
雨はますます強まっていた。広重の「庄野」のような雨が降っていた。
とそこへ、落雷。空から光ったムカデのようなものがするすると降りてきて、電柱のてっ
ぺんに触れた。ドカーンと、耳をうつような音がした。私も弟もびっくりした。停電になった。
まもなく、電柱の突端から煙があがり、ぶすぶす燃え始めた。雨の中に青い煙が上がるのが不思議に思えた。
落雷。落ちるというより電気の“手”が電柱を掴むように見えた。原爆が落ちたときも電柱がぶすぶす燃えたという話を、広島でも長崎でも聞いたことがある。
夕方のニュースで首都圏の落雷を繰り返し見せていたが、電光はまるで血管のように見えた。子供の頃に見た形と違うなと思った。
稲妻のぬばたまの闇独り棲む 竹下しづの女
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