夏の句を口ずさんで
忙中に閑ありて。
愛唱している、夏の句を記しておこう。
しんしんと 肺碧きまでの 海の旅 篠原鳳作
この句には季語がないので、物議をかもした。たしか草田男が、季語を入れて同様のイメージを作ってみせたことがあるはず。
たしかに、よく似た句はできるかもしれないが、この句のように雄大で潔癖な感覚が果たして出現しているといえただろうか。
たしかな季語はないが、どう読んでもこれは夏の船旅だと思う。
蝶落ちて 大音響の 結氷期 富沢赤黄男
これも季語がない。蝶が春の季語としてあるかなあ。だが、これも夏の句に思えてならない。
滝の上に 水現れて 落ちにけり 後藤夜半
古典的な写生句だ。たしかに滝口を見ていると、水のある塊りが前に進み出て、やおら落ちてゆくという現象が見受けられる。
作者はよく見ている。
夏の河 赤き鉄鎖の はし浸る 山口誓子
いかにも炎天の波止場だ。岸壁から鉄の鎖が水面に垂れている。赤い錆をまとった鉄の鎖の先は水中に没している。けだるい夏の昼。
今朝、久しぶりにツヴァイクの道を降りた。山道に栗の青い毬(いが)が2つ落ちていた。8月になったばかりだというのに、山は秋を告げている。今年はさほど暑くならないまま、夏は行くのだろうか。
駅前まで出ると、若者らが海水浴場に向かって歩いている。その後ろをトンボが3匹飛んでいた。
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