人気ブログランキング | 話題のタグを見る

定年再出発  


懐かしい空
by yamato-y
カテゴリ
以前の記事
2023年 03月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 02月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 06月
2021年 03月
2020年 12月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月
2005年 04月
2005年 03月
2005年 02月
お気に入りブログ

最新のコメント
山登さま  コメントを..
by 髙木佑透 at 22:21
 私は京大の書評誌『綴葉..
by 髙木佑透(映画「僕とオトウト」監督) at 23:27
山登様  初めまして、..
by 髙木佑透(映画「僕とオトウト」監督) at 23:26
岡田さん、メールありがと..
by yamato-y at 22:13
突然失礼いたします。ぶし..
by 岡田圭一 at 09:38
yamato-y様 首..
by GFauree at 12:33
yamato-y様 記..
by GFauree at 12:23
突然のコメント、大変申し..
by 三須 at 21:39
足をどうしたのですか?やまと
by yamato-y at 12:39
8月にNHKで放映されて..
by のるや at 09:30

火をめぐらす鳥

火をめぐらす鳥・鶯

大江健三郎の後期短編に「火をめぐらす鳥」というのがあって、1991年に書かれている。

伊東静雄の詩に触発されてこの短編が生まれている。その詩の言葉とは――、

 (私の魂)といふことは言えない
  その証拠を私は君に語ろう

この詩をはじめて読んだ高校3年生のとき、大江は熱い涙をながした。
《身体の芯に火の玉があり、その熱でシュッシュッと湯気のたつような涙が噴出するのに、茫然としながら…》
18歳の大江はこの言葉に強くひかれ、老年にいたってそのときの感情が小説となって浮上してきたのだ。

この短編小説には大江と思われる作家を語り手として、長男光をモデルとしたイーヨーが登場する。脳に障碍をもつイーヨーは幼い頃、外部とほとんど交通しなかったが、鳥の声にだけは反応した。声らしい声をはじめて主人公が聞いたのは、北軽井沢の夕暮れの林でクイナが鳴いたときであった。「クイナですよ」とイーヨーの幼い声がもれたのだ。
物語は、ここから鳥の話へ展開する。

ウグイスの漢字は鶯である。あたまに火が2つ付いている。ホタルの漢字は蛍、これも正字は火が2つ付いたカンムリである。
 主人公がホタルを辞書で引くと“火をめぐらす虫”とある。ならば、ウグイスは火をめぐらす鳥ではないかと、主人公は思いめぐらす。

亡くなった、若い頃の友の魂を思い出す。それは私、イーヨー、その友、と三者が重なるようにしてある――…「(私の魂)といふことは言えない」
しかも《その時すでに亡くなっていた友達の魂が、鶯の声のように山や野のいたるところで光を発している。》鶯は火をめぐらすように、光を放つように、歌いながら飛び回る鳥というイメージが動き出してくる。

昨夕、私は海まで散歩に出かけて、この山まで帰ってくると、森の奥から鶯の声が聞こえてきた。夕暮れ、梅雨の晴れ間、小暗い森から聞こえるそれは、亡き魂を思い起こさせた。鶯はまさに火をめぐらす鳥であると、私も実感せざるをえない。

この短編小説のラストシーンは小田急線成城学園駅のホームとなる。そこで、主人公はイーヨーと電車を待っている。
と突然、イーヨーの体が揺れ傾いてゆく。〈癲癇発作〉が起きたのである。そこでイーヨーをかばおうと主人公は手を差し伸べ、そのまま二人は転がり落ちて行く。…

この小説が1991年に発表されたとき、〈癲癇発作〉のような劇的要素は実際にはありそうもないが、フィクションとしては面白いと、私は感じていた。こういう出来事はあくまで「お話」の中でのことと思っていたのだ。

それから3年後、私のチームは大江一家を長期撮影していた。北海道のコンサートホールでのレコーディング風景を収録したときだ。緊張と長旅の疲れで、大江光は〈癲癇発作〉を起した。偶然、私たちのカメラはその光景を記録した。
ゆっくり崩れ落ちてゆく光、必死で支える母。そして、やや遅れて下半身を確保するディレクターのケンスケ。…

この小説で書かれたことは、在り得ない話ではなかったのだ。光を襲った暗い影は、傍から想像するものの数十倍深く大きなものであったと、後日ケンスケは私に教えてくれた。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング
by yamato-y | 2006-06-25 21:06 | 魂のこと | Comments(0)
<< 立ち止まり考えている 金子光晴さんよ >>


その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧