人の値打ち
ある人物の評判がよくなかったが、会って話してみると、私にはけっして悪い奴ではないと思える。こんなことが最近あった。しかも忠告してくれた人も私は好きだ。
つまり、私をはさんで二人は仲が悪いのだが、それぞれと私とは悪くない関係にある。
他の人には良くない人物も、私にとってはかけがえのない人っているんだよなあ。
次のエピソードは公にしていいかどうか分からないから、「文字式」で書く。
よく知られた役者がいる。一時は人気役者となったこともあるが、歳をとって性格俳優として知られるようになった。芝居がうまいのは子役からのキャリアによるのだろう。
彼が、ある独立プロの映画に出演した。小品だが意欲的なシナリオだった。監督は一生懸命だった。
だが資金がショートした。映画製作を断念しなくてはならない状況に、その監督は追い詰められた。中止を役者に報告するため監督はやってきた。
その説明の途中、監督は落涙した。およそ涙を流すとは思えない人が泣いた。この作品を作らないと、私はその先に行けないのだと。話を聞いていた、その役者は席を外した。
別室で、銀行に電話して、今の俺にだったらいくら融資できると聞いた。
5000万円、その名前で借り出し、監督に渡した。20年以上前のことだ。当時としては大枚だ。
映画製作は続行され、ついに完成した。
だが、興業はぱっとせず、結局、その役者は多額の借金を負うことになったが、別にそれに対して恨みがましいことを言うことはなかった。
今、この役者の名前を明らかにしたい誘惑にとてもかられる。だが言うまい。
その人物について芸能界で聞く噂は、嫌味で偉そうだということ。新人をいびるという話を聞いたことがこれまであった。どことなく狡猾な印象のあるその人物が、そんな心意気をもっていて、照れ屋だということを、この話で初めて知った。
この役者が根っからいい人なのか、その監督にとっていい人なのか、それは定かではない。でも、どっちだっていいじゃないか。
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