ドキュメンタリスト
ドキュメンタリーを作る人をドキュメンタリストという。
本日、私の講座に永田プロデューサーを招いて彼のドキュメンタリーに対する考え方を聞いた。
私の所属する20世紀学はそもそも歴史学の範疇に属すると永田さんは知って、ジャーナリズムと歴史学の交わる部分を中心に話をしてくれた。
講演は4時間にわたって行われる熱いものとなった。
話の切り出しは1954年という年だ。彼が生まれた年である。その年は日本にとってもアメリカにとっても意味深い。ビキニで水爆実験が行われ、第5福竜丸の乗組員、ロンゲラップ島の住民、作戦に参加したアメリカ兵が被爆したのだ。永田さんの名前を轟かせることになる名作「ビキニの記憶」を構想、制作する背景を語り始めた。
この水爆実験は台頭躍進するソ連や中国に対するけん制からだった。反共ということが歴史にせり出して来る。
この年の後半からマッカーシー上院議員が声を大きくしてゆく。彼は「アカ狩り」の先頭にたって映画、新聞、テレビ、などメディア関係者を中心にリベラルな人物を次々に葬っていくのであった。いわゆる「マッカーシー旋風」が全米に吹き荒れるのだ。そのレッテル貼りは野蛮で強引なものだった。密告があちこちで行われ、アメリカのモラルが地に堕ちてゆく。
この腐敗した権力に立ち向かったのがCBSの人気キャスター、エド・マーローだ。エドは無体なラベル貼りの一つ一つを検証しながら、その横暴を世間に向かってディーセントな語り口で説いてゆくのだった。その戦いを描いたのがジョージ・クルーニーが製作した最新の映画。「グッドナイト&グッドラック」。監督はハリウッドの人気スター、ジョージ・クルーニー。ニュースキャスターを父に持ち、幼い頃からエド・マローをヒーローだと思っていたと言うクルーニー。熱い情熱で撮りあげた本作は、アカデミー賞で主要6部門へのノミネートを果たした。

主人公、エド・マーローの魅力的なエピソードをここからも引用して、永田さんは聴衆の心をしっかりつかむ。講演会場の第7大講義室は100人余りが息をのんで話に聞き入った。
大きな権力と立ち向かってゆくジャーナリストの戦いを、永田さんは穏やかにかつ熱く語った。
講演後半は、ケネディ暗殺事件とその真相報道を例に挙げながら、日本の戦後史に起きた謀略事件の謎を解明する番組について、現在企画中であることを報告した。
4時間があっと言うまに過ぎた。今回の講演内容は、永田さん自身が文章にまとめて20世紀学の紀要に寄稿してくれることになった。それをきちんと読んで、この講演の全体をブログに書くつもり。
永田さんの演題は、
「映像は歴史をどう伝えるか~私の体験から~」

賀茂川は今朝は人影がまばらだ。
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