惜別の唄
今朝は大磯の家に一人いた。
朝、目覚めて雨音を聞いていて、40年前近くになることども思い出していた。
横山町の薄暗い教会で、3人しかいない生徒に賛美歌を教えたことがある。オルガン伴奏もなくアカペラだった。埃っぽい会堂はわれわれ5人しかおらず、歌声はよく響いた。金沢特有の春の細い雨が降っていた。あの中学生らも今では53歳になっているのか。
当時、目のくりくりさせたあどけない姉妹だったが。
一緒に教えた友は山男だった。暇があると白山へよく登っていた。「冬山はいいぞ」と単独行を好んだ。大学紛争が激しくなる頃、理由もなく疎遠となった。小島卓君と言った。
文字とは名前とは不思議だ。こうして固有名詞を書いたら、まざまざと友の顔が浮かんできた。40年間忘れていたか、忘れたふりをしていたか、一度も綴ったことのない町や友の名を記した途端、あの時のことが蘇ってくる。
試しに、友に教えてもらった藤村の「惜別の唄」をソラで書き出してみよう。
惜別の唄
遠き別れに 耐えかねて この高殿に 登るかな
悲しむなかれ わが友よ 旅の衣を整えむ
別れと言えば 昔より この人の世の 常なるを
流るる水のさやけさに 夢恥ずかしき 涙かな
君がさやけき目の色も 君紅の唇も
君が緑の黒髪も またいつか見む この別れ
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