晩春
春はふけてゆく。芭蕉はそれを惜しんだ。
行く春を 近江の人と 惜しみけり
この句を読むと大津生まれの母を思う。琵琶湖のかすみが浮かんでくる。だが、それを惜しむという気持ちには今年はならない。母が病んだせいか。
さて、晩春にふさわしい詩は杜甫のあれだ。あれしかない。
春望
國破れて山河あり 城春にして草木深し
時に感じて花も涙をそそぎ 別れを恨みて鳥も心を驚かす
峰火は三月に連なり 家書は万金にあたる
白頭の掻きてさらに短く
すべてかざしに たえざらむと欲す
山道に藤の花びらがこぼれていた。音もないのにほろほろと散ると言いたい。
花散りて 高き位置を知る 藤の波 不見枕
名もない人の句でときどきどきっとするものを見る。
朝寝して 夢のフィルム 巻き戻す
これは春の句だろう。春眠といった趣だ。夢のフィルムという表現は、夢を二度寝して見直すという意味を指すのだろうが、作者の夢のような時代という意味にも重ねたい。
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