空虚な社会、日本
『狂気の偽装』(岩波明著)を読み終えてまず思ったのは、「心の病」というのはまだまだ分からないことがたくさんあるのだ、ということ。よく知られる疾患、統合失調症(精神分裂病)やうつ病といった以外に、境界例、人格障害、アダルトチルドレンやストーカー、リストカットなどの新しい症例などが現在次ぎ次に現れてきている。
この現実に向き合う医師たちですら判断するに迷うことが多々ある。
いや、その医師すら、その在り様が正しいかどうか、治療がふさわしいかどうか、疑われるケースがたくさんあるのだ。
知人はここ2年精神科に通院しているがいっこうによくならない。それどころか、薬の量はますます増えている。診察の様子を聞くとその医師自身が問題のある人格ではないかと思われて仕方がない。クライアントの問いかけに対しても当り障りのない返答ばかりしている。薬だけが増えしかもきついものに変わってきている。他の病院にも行ってみたらと薦めても当人は納得しない。妙な依存が生じているのだ。でも、私の目から見ても「症状」が悪化していると思われるのだが。
本書の帯に「その『心の病』は大ウソだ! マスコミが煽り、社会に蔓延する『精神病』の虚妄を衝く」とある。かなり胡散臭い心の病があるというのだ。ゲーム脳、殺人者精神病などはその例。アダルトチルドレンやPTSDも間違えたり拡大したりして、世の中に流布していると岩波明は見ている。こういうことで売名するカウンセラーや精神科医、ライターがいるのだ。
本書でどきっとする箇所がある。心の病は日本特有のことではないと著書は考えているが、それでも日本的な傾向と見る症例を挙げている。ネット心中、自殺系、自傷系の病だ。その根元は「空虚」。今の日本ほど長い歴史の中で空虚な社会は稀ではないだろうかと、岩波は問う。欧米だとて同じではないかと考えるも、異なる点が二つある。一つは宗教の存在。もうひとつはどうしようもないほど硬直した統制社会に日本はなっているというのだ。
この宗教の空白に邪教が侵入したらどうなるか。息苦しいまでの相互監視、陰湿ないじめ、パワハラ―統制社会。
その「空虚」の黒雲は引きこもりやストーカー、依存症にまでじょじょに及んでいきつつある。
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