昭和が遠くなる
今、母が寝込んでいる。やはりこの冬が例年にまして寒かったことがこたえたのだろう。
一人で暮らしているので、大阪の弟夫婦が顔を出していてくれる。だが、私も行けるときには行かなくてはとは思っている。明後日から京大での授業が始まる。帰りに敦賀まで足を伸ばして母を見舞うつもりだ。
母が6年ほど前に詠んだ短歌がある。
大陸へと大き手を振り船出せり 君を見送りしは今も眼裏(まなうら)に
敦賀港駅にちなんで作った歌だ。
かつて敦賀は日本海貿易の中心地であった。ここからナホトカやウラジオに船が出た。
母の友もおおぜい開拓団として大陸に渡って行ったそうだ。岸壁で見送った思い出を歌にした。まかりまちがえば、私も大陸へ行きさんざんなめにあったかもしれないと、この歌を私に見せながら、母は語った。母の青春は戦争で一色だったのだ。昭和元年に生まれた母はまさに昭和の子である。
その昭和がだんだん遠のいてゆく。
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