小松崎茂の世界

昭和時代、空想科学の図解で小松崎茂は傑出していた。
とくに昭和30年代前半に起きた戦記ブームでの活躍はすごかった。太平洋戦争時の戦艦、航空機、などを実に緻密かつダイナミックに、少年たちに見せてくれた。
そのあとに起こるプラモデルブームでもキットの箱の絵はほとんど小松崎だった。独特のかっこいいサインが少年の憧れだった。大伴昌司との仕事もかずかずある。とくに「少年マガジン」巻頭図解で話題を呼んだのが地球大終末だった。
大胆なイメージ、繊細な筆遣い、そして日本人離れしたカラフルさ。
このところ、大伴やウルトラマンのブームなどと呼応するように、小松崎の仕事が評価されている。その本の名はずばり、『図説、小松崎ワールド』(河出書房新社)。なつかしくなって私も手に取った。
私にとって忘れられないのが巨大爆撃機「富嶽」の想像図だ。実際には建造されなかったが、戦争末期軍部が必死に開発したという、超巨大な爆撃機を描いた作品だ。B29より大きく航続距離も長く、高層を飛行するという「化け物」だった。これが開発されていれば日本も戦争に負けなかったのにと、いつも少年たちを歯噛みさせた、幻の飛行機だ。この幻を実体化させたのが、小松崎の絵だった。
あの頃、少年は戦記ものに夢中だった。「丸」などという雑誌を懸命に読んだものだ。この少年たちが、70年に近づくころ皆反戦青年となっていくのだから、団塊世代のアイロニーというべきか。そういう思いを小松崎の絵は呼び起こす。
小松崎の画集の中に、晩年の肖像写真があって、彼の背中が曲がっていることがはっきり見て取れる。あまりに机に向かって絵を描いたためにそうなったという。
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名作といわれた「地球大終末」