苦い夢
今朝、明け方に苦しい夢を見た。人肉を食べる夢を見たのだ。
どういう経緯でそうなったかは不明だが、相棒と二人でいた。彼がそのブツを調理してくれたのだが。
手早く、部位を切り離し、焼いたり煮たりする。調理したものを、私の前に持ってくる。「よく火を通したから大丈夫だよ」とか相棒はぶっきらぼうに言う。
だったら君が食えよと言いたいが、私は声がでない。
まず、腕一本を私はかじる。ケンタッキーのチキンのように、ももにはサクッと歯がたつものの、噛みすすむうちに筋がぷつっぷつっと切れて、身が毛羽立ってくる。とそこで夢の場面が変わる。
胸が裂かれて心臓が取り出される。そのまま熱湯でボイルされる。茹で上がった心臓にはびっしり繊毛が生えている。(まるでスモモのようだ)
そのハートに包丁が入る。輪切りにされたブツが皿に盛られて、私の前に持ってこられる。
私は箸でつまんで口の中に入れる。飲み込もうとすると、急激に嘔吐感が襲う。ゲホと咥えたままむせる。苦しくて涙が出る。夢はそこで終わった。
目が覚めても鈍い。いやなかんじが身内に残っている。なぜ、こんな夢を見たのだろう。
そういえば、人食いの語カニバリズムはカーニバルと同じ語源だったはずだ。まさか、私の中で何か祝祭する気持ちがねじくれてあるというわけでもなかろう。
中野美代子の名著『迷宮としての人間』にはカニバリズムの詳細な論証があったことを思い出す。上田秋成、久生十蘭、武田泰淳、サド、スウィフト、星新一、と膨大な人肉嗜食の論考だった。よくまあ、これだけおぞましくもなく列挙したものだ。中野さんという人は女傑と聞いたが、聞きしに勝る。
中井英夫は、この本の書評で不思議なことを述べている。「人肉というものは金魚や蟻と同様、試食しなくても確かにその味を知っていると思わせる不気味な存在」
人間は無意識に人間の味を知っている。
ただいま2時、広島から戻ってきて目黒にいる。今から、恵比寿のつたやへ行こうと思う。ここには珍しい古い作品が多数あるのだ。
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