本通のネットカフェから
広島で取材する私のもとへ、京都の学生から電話が入った。大阪のテレビ局に就職が内定したという。もうひとつ本命の公共放送をかかえていて、どうしようか迷っていると相談してきたのだ。内定をもらった局には2日以内に返事をすることになっているがどうしようという。
私はそこへ行ったほうがいいと答えた。映像を志す道はおそろしいほど狭い。仮に次の局の結果を待ってもいい結果の保障があるわけでないし、映像への可能性はいよいよ低くなる。内定を得た放送局で、自分のやりたい番組が作れるかどうかは定かではないとしても、このチャンスを逃す手はない、と私は忠告した。
就職浪人していた彼女は、電話の最後に「本当は内定もらえてムチャ嬉しいんですけど」と素直に喜びを語っていた。おめでとう。これから面白いことがあんたを待っているよ。
無責任にアドバイスしたのではない。時代は変わってゆく。私のように生涯同じ会社で仕事をするというかたちは減ってゆくだろう。男女関係なく、実績でキャリアをアップして転職を繰り返しながら自己実現を目指すシステムに世の中は変わってゆくと思われる。
春――就職活動の時期。私も大学4年の春はずいぶん悩んだ。すんなり今の仕事につけたわけではなかった。というより、偶然のようにしてこの仕事を与えられたのだ。「なる」ようになる。出会った入り口があなたの人生の始まりの場、そう考えてこの就職戦線を乗り切ってほしい。私が教えてきた学生たちにそう伝えてやりたい。
広島本通、アカデミー書店でしばし立ち読み。池島信平の『歴史好き』を購入。その店の棚には、阿部知二、小酒井不木、江戸川乱歩、横光利一らの本が並んでいて欲しかったがどれも5千円以上したので躊躇した。
横光の『春は馬車に乗って』というのはいいタイトルだ。これは復刻本で3500円だったが安っぽく思えてパス。阿部は岡山の出身だということをはじめて知った。
最近、昭和初年のモダニズム文学に関心がゆく。おそらく大伴昌司の母四至本アイさんの影響だろう。アイさんはかつて徳田秋声、吉行エイスケ、舟橋聖一らと交わったことがあって、そのころのエピソードをいろいろ聞かされているからだ。これまで、軟い大衆文学と無視してきたのだが、大伴を描くうえでも、この人脈は研究しておかなくてはなるまい。
阿川弘之に『春の城』という作品がある。阿川は広島の出身だから、この城はきっと鯉城をさすだろう。今日の広島は暖かい、というより汗ばむほどだ。春はまっしぐらにこの町にも来た。こぶしの白い花が歩道に落ちて腐しとなっている。いよいよ弥生儘となりしか。
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