渋谷宇田川の今は昔
国木田独歩の『武蔵野』を手にした。前半をぱらぱらと読む。ケヤキ林の武蔵野台地をあれこれ称賛しているのだがこれのどこが優れているのだろうか。私には分からない。近代になって風景を風景として捉えられるようになった、その嚆矢というが、それほどたいしたものだろうか。全部読み通したわけではないから、文句を言えたギリでもないかもしれないが。
これを書いたとき独歩は今私が仕事をしている放送センターのすぐ近くに住んでいたことを知っ
て驚く。渋谷でもこのあたりは相当田舎であったと思われる。
ちょっと時代を下って、「春の小川」の歌(♪春の小川はさらさらゆくよ)が生まれた頃には少しは開けたようだ。其の川は宇田川といって今わが社の前を流れるも暗渠となっている。
其の川が露天で水流もきれいだった頃、少年大岡昇平はこのあたりに住んでいた。早世した富永太郎は初台にいて、大岡は富永兄弟とよく交わったという。
この道の下を宇田川はながれる
誰に聞いたか忘れたが、戦前非合法だった共産党の活動をしていた者が宇田川あたりによくアジトをもっていた。今のNHKは練兵場で暗い森になっていたそうだ。この森の中ほどで警察の管轄が淀橋と渋谷の2つの署に分かれていたので逃走するのに都合がよかったという。
川本三郎さんに習ったように、目の前の風景に過ぎ去った風景を重ねて見ることをやってみる。絣の着物姿の大岡が見える。成城高校へ通ってすこし生意気な男子が宇田川の路地から出てきそうな気がした。谷口ジローの漫画の読みすぎかなあ。
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