ウルトラ星に去った人⑪
昭和の初年に「新青年」という雑誌があって探偵小説や怪奇小説が多数掲載された。江戸川乱歩や横溝正史らが活躍した。その雑誌の執筆者の一人に海野十三がいる。
早稲田の理工を卒業して逓信省電気研究所に技師として働くという異色の経歴をもっている。
だがそのことは科学知識を駆使するのに役にたったのだ。彼の描く「探偵小説」はどちらかといえば科学小説といったほうがふさわしいのだが、当時まだそのジャンルがなかった。異色探偵作家と呼ばれた。そして、少年のために軍事科学冒険小説を書き始め、いっきに少年たちの心をつかみ人気作家となってゆく。戦前では「浮かぶ飛行島」や「太平洋魔城」、戦後は「謎の透明世界」「火星探検」「超人間X号」といった作品がある。
昭和11年生まれの大伴昌司は戦後まもなくこの海野十三の作品に出会い熱狂する。同世代の小松左京、筒井康隆らも海野のつよい影響を受けたと告白している。つまり、海野の小説はSFのはしりだったのだ。大伴の中に、海底要塞、地底都市のイメージにつよくこだわっていることは、彼の作品を仔細に見ていくと気がつく。その原イメージは海野十三によるところが大きいのではないだろうか。ここはこれから比較検討していかなくてはなるまい。
さて、若いころ結核を患った海野十三は日頃から「52歳までしか生きられない」と語っていて、実際昭和24年に52歳で死んだ。このエピソードは大伴の40歳までに死ぬという口癖を思い起こさせて興味深い。
実は、大伴は自分の家(これから怪獣館と呼ぶ)の棚に海野十三の短冊を飾っていた。大伴の死後、母の四至本アイさんの手によって大切に保管されている。アイさんの話によれば海野や南洋一郎の作品が収載された少年倶楽部を大伴が読みふけっていたそうだ。
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伝説となった「少年マガジン」の巻頭図解。300を超える企画の中に、海野の影響が見られるものが散見される。