楽苦(たのくる)しいこと
今、苦しい。番組の制作過程で起きるいくつかの困難のひとつにぶち当たっている。
番組とは、ぽこんと企画が生まれたら簡単に取材、編集へと進行してゆくというわけにはいかないのだ。
取材段階では、取材不能、取材拒否、事実錯誤などがあり、編集段階では物語がない、主人公が弱い、著作権の問題など、さまざまな難所が待ち受けているのだ。この一つ一つにぶつかるたびに正直逃げ出したくなる。
それでも逃げるわけにはいかない。他者に対する責任もある、がなにより自分の誇りにかけて遁走はできない。
茶の間で何気なく見ている番組でも、その裏側でどれほど辛い思いや悔し涙が流れたかを想像してしまう。職業的習性だ。
こうして苦しみのたうち回って、挙句作品が出来たときの喜び。
そして、それが大勢の視聴者から共感されたときの感動。なにものにも代えがたい。以前、高校野球をやっていて故障で退部して絶望していた少年が、私の「もう一度投げたかった」を見て励まされたという便りをもらったことがある。嬉しかった。
番組を制作することは、「楽苦(たのくる)しいこと」なのだ。
定年になって仕事が減り、楽になったと喜べるかと思ったが、実際は仕事ができないことのほうが苦痛だった。苦しいことがあると分かっていてもつい企画を考えてしまう因果な性分となり因果な商売を選んだものだ。
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