余寒
酒飲みではないと思う。酒席がすきなのだ。酒とキンツバを両方出されたらきっと後者を私はとる。バブルの頃、毎夜飲み屋に出没したのも酒を飲みたかったからではない。騒ぐのが好きだったのだ。
こんな私でも酒の美味い不味いぐらいは分る。最近流行りの若者向け居酒屋チェーン店に行くと日本酒がうすい。水っぽい。多分湯でわっているのだろう。生ビールを頼むとホップがきいておらず呆けている。これは発泡酒だな。だから、こんな店には行きたくない。
中味は本物でも不味い酒というのを九州で体験した。場末の雑居ビルのスナックに行った。カウンターには誰もおらずボックスに夫婦のようなカップルがカラオケを熱唱していた。ちょっと嫌な予感がした。
福岡の外れの町だから地元の人と行ったのだが、ここで飲みながら打ち合わせるのは場違いかなと思った。だからすぐ席を立てばよかったのだが、そのままずるずるといた。
芋焼酎のお湯わりをたのんだ。出てきたのはぬるいお湯に焼酎がだらっと溜まっていた。
ぬるい湯で割る酒ほどまずいものはない。とにかく杯を開けてお代りした。今度はちょっとお湯を熱くしてくれる?と頼んだ。ママは「あらあ、前のぬるかった?」と聞く。うなづくと、ではもう少し長めにレンジにかけるわと言うではないか。沸かした湯ではないのだ。道理ですぐ冷めると納得。次を期待した私が馬鹿だった。
川本三郎さんも魚津でやる気のないすし屋に入った話を書いていた。テレビばかり見ていて仕事をしていないとあった。それでもつまみに出たホタルイカは美味だったとある。一応フォローになっていた。
私の場合はまったくなし。出てきたつまみが3点セットという。湯豆腐、サラダ(レタスとかにかまぼこ、それにマヨネーズがけ)、白菜の漬物少々。加えてキットカットがある。
酒はまずいし肴はひどい。さらに、演歌のカラオケが採点つきで、終わる度に夫婦者が一喜一憂でうるさい。かくして玄海灘の夜は更けて行く。
今朝よく冷え込んだ。暖かくなった蒲団の中でもぞもぞしながら、九州の夜を苦く思い出した。
8時になったので蒲団から出た。洗面所から背戸の山をながめたら霧がわいていた。
峰々に霧たちのぼる弥生かな
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