パレスチナ問題
今、マルティン・ブーバーの『ひとつの土地にふたつの民・ユダヤ―アラブ問題によせて』を読んでいる。今年の1月末に出版されたばかりだ。
アウシュビッツの問いをずっと考えながら、当然のようにパレスチナ問題へと導かれてきた。
私は大江さんからW・サイードというアメリカに住むパレスチナ人を教えられ、その人の番組を3回制作したことがある。3本目は彼が病死する直前であったことも含めて、印象深い人物だ。彼から導かれたパレスチナ問題は思った以上に深かった。
アウシュビッツとパレスチナ――近現代において複雑にからみあい錯綜している。ここにまたアポリア(難問)がある。
アウシュビッツであれほど過酷な運命に遭遇したユダヤ人がなぜパレスチナ人に対してあれほど残酷になれるのか――。
私などは、第3次中東戦争以降しかその趨勢を同時代的に意識していないが、この問題は遠く1次大戦の頃に淵源があることを教えてくれる。今は知らぬ顔の半兵衛のようなイギリスらヨーロッパ列強がこの問題の原因に手を貸しているという事実。いわゆる、現代帝国主義の結果として起きたパレスチナ問題。当時の生々しい証言を、この著者ブーバーが果たしている。
高名な神学者であったブーバーは1920年代、住みなれたヨーロッパをあとにしてパレスチナの地に移住する。ユダヤ問題の要にあるシオニズムのうねりを同時代的に目撃しながら、果敢にこれを批判する立場をとり続けた人物だ。この著書は年代的に編まれ、彼の政治的ジャーナリスティックな文章が集められているとはいえ、やはり難しい。だが、断片として飛び込んでくる一節一節には心ひかれるものがある。
この集のかわきりに、ツヴァイクとの往復書簡から始まることは、私にとってはとても興味深い。
ついでに瑣末なことだが、ブーバーが住んだエルサレムの家は、かつてサイード一家が住んでいたものである。
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