シンクロニシティ③
絵本作家の長新太さんが亡くなった。不思議な絵本を描く人だった。
私にとって忘れられないのは、「ブタヤマさんたらブタヤマさん」だ。ブタヤマさんシリーズでキャベツとブタヤマさんは有名だが、この作品もいい。
ある日、ブタヤマさんは蝶々を捕りに行く。野原で蝶を追っていると、ボワっとブタヤマさんの背後に大きいセミやバッタやネズミや“お化け”が現われる。ブタヤマさんは前方に注意がいっていて気が付かない。そのお化けたちは「ブタヤマさんたらブタヤマさん、後ろを振り向いてよ」とせがむが、気が付かない。
しばらくして、何もいなくなったころブタヤマさんは振り返り、「何もいないな」とつぶやく。こういう話だが、幼い子どもたちは大好きだ。ブタヤマさんたらブタヤマさん、というリズムのある言葉。ブタヤマさんという子どもの好きな名前。長さんは本当に子どもの心を知っている。おそらく、当人もそのまま子どもじゃなかったか。
この本は20刷り以上版を重ねていて、けっこう品切れになっているほど人気がある。ブタヤマさんに「危険」が迫っていて気が付かず、こどもたちはハラハラして、ブタヤマさんたらブタヤマさんと呼びかけるそうだ。そういう見方もある。ちょっと違う見方もあるのだ。このブタヤマさんこそ心理学者の姿だよと、教えてくれた人がいる。
河合隼雄さんだ。実は、先生はこの絵本を使って大学で講義をした。しかも最終講義である。それを、私は撮影して番組にしたのだ。これを契機に私は河合さんが考えているシンクロニシティというものに開かれていった。
来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング