カトー・コーイチ

喫茶店文化が衰退している。スタバやドトールのようなコーヒーショップが出てくると
地域の個人で営む喫茶店はやっていけない。昔ながらの喫茶店はどんどん姿を消している。
現在のポロン亭は、友人だったミヨの姪のヨーコさんが切り盛りしている。彼女の話によれば、若い客など
ほとんどこない。たまに来るとコーヒー用サイフォンを珍しそうに見て、理科の実験みたいだと喜ぶそうだ。
そういう厳しい中、ポロン亭はまだ暖簾を守っている。そこの定休日を利用してライブハウス活動が
コーイチの手で行われている。かれこれ30年になるそうだ。いろいろなシンガーが足跡を残した。
南正人、高田渡、友部正人、西岡恭蔵、友川かずき、・・・。歌手だけじゃない。落語家も映画監督も
ここで語ったり演じたりした。すべて、コーイチのプロデュースだ。彼はいっさい報酬をとらない。収益は店と
アーティストに還元される。
コーイチと知り合ったころ、彼は埼玉の公立中学の数学の先生だった。朴訥で熱い教師だったので生徒から
慕われていた。80年代半ば、教育現場が荒れ始めた。教師はそこに向き合うことを避けるようになる。
そういう現場に幻滅し、コーイチは学校を辞めて塾ほびっと村を開く。そこで、問題児といわれた子供たちと彼は歩き始めた。
一方、彼はロックが好きだった。長男に光久(ミック)と命名するほどローリングストーンズにはまっている。その音楽好きが
嵩じてライブハウスをはじめたのだ。
この活動にはいろいろあった。ナミさんははっぱでぱくられ、ワタルは56歳で去年死んだ。ゾーさんも自死した。
いろいろあったけど、アーティストたちはこの店で素晴らしいライブを聞かせたのだ。
ゾーさんこと西岡恭蔵の最後のライブはこの店だ。それは、今もフォークファンの間では語り草になっている。
今夜のシンガーおかたいすけは弱冠27歳。ピアニカの笠井由紀子と懐かしい歌を歌う。懐メロを歌うわけではない。
70年代音楽シーンを背負ったような歌い方、歌なのだ。だから私にはぴったりくる。
そして、客席にナミさんのマネージャーだった成田ヒロシが来ていた。彼は作詞もする。有名な「あたしのブギウギ」は
彼の作品だ。そこで、おかたいすけはその「あたしのブギウギ」を歌うのだが、とても20代と思えないぐらい昔っぽく歌い上げるのだった。
今夜は20席満員だった。終盤、おおいに盛り上がった。
店が退けて、コーイチと新宿までいっしょに帰った。トレードの口ひげには白いものが目立つが、
昔と変わらないジーパンの似合うスリムな体形だ。相変わらず、とつとつと自分が面倒をみている塾の子供たちの話ばかりしていた。受験の時期がすんだら、一度ゆっくり話そうということになった。3月には、大磯の我が家へ来てくれることになった。

来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング