遥かなアフリカ遠いルワンダ

今、静かな評判になっている映画「ホテル・ルワンダ」を見た。渋谷シアターNの単館上映だが、午後3時の部へ行ってもほぼ満員。6時の観客もずらっと並んでいた。
1994年。ルワンダ共和国の首都キガリ。舞台はベルギー資本の高級ホテルミル・コリン。主人公のポールはそこの有能な支配人だ。彼はフツ族出身のエリートだ。
この国では多数派のフツ族と少数派のツチ族が長年争ってきた。3年間続いた内戦がようやく終息し和平協定が結ばれようとしていた矢先、フツ出身の大統領が暗殺される。犯人は分からないが、いっきにフツ族がツチ族を襲撃しはじめる。フツ族の民兵グループが市内を威圧的に練り歩き、ラジオでも公然とツチ族非難が繰り広げられる。フツ族ではあるが穏健派のポールは民兵たちのやり方を嫌悪しているものの、それを表に出すわけにはいかない。なぜならポールの妻はツチ族だからだ。
やがて虐殺は全土に広がり激しさを増してゆく。フツ族主導の政府が中心となって、わずか3ヶ月間で100万人のツチ族を虐殺へと発展していった。高級ホテルの副支配人ポールは追われるツチ族の人々を自分のホテルにかくまうことになる。その数1268人。ポールは薄氷を踏む思いでその命を必死で守ろうとしてゆく――。
これは実話に基づいている。アウシュビッツのように50年以上「昔」のことではない。わずか10年前の同時代の出来事だ。国連の平和維持軍が進駐していようと、虐殺が進む事実。見てみないふりをする英、仏、米、の大国。リンチもどきの民兵襲撃は映画と知っていても心が凍りつく。ああ、ナチのSSも震災のときの自警団もこういう精神状態にあったのかとまさに心震える。
アウシュビッツは時の遠い彼方にあり人類はその邪悪を克服したかのように錯覚するが、人間はけっして過去に学んでいるとはいえない。同様のことがカタチバショを変えて反復されるのだ。
だからこそ、記憶されねばならない。記憶は表現として刻まれなくてはならない。これは劇映画だが、かつてこの事実をとりあげたNHKスペシャルがあった。優れた作品でたしか国際的な賞を受賞したと思う。この映画に登場するテレビクルーや国連維持軍のなまなましさはけっして他人事ではない。
この映画におおぜいの若者が見に来ていた。当初、日本での上映される予定がなかったのを、若者の呼びかけ署名で、公開されることになったと聞く。今、上映館も次第に増えているという。ここに何か可能性を感じる。
若者はハリーポッターとホラーばかりを見ているわけではないんだ。
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