雪の日に

ふだんも静かな大磯紅葉山は、雪が降るとなお寂しくなる。日没とともに雪はやんだが、物音ひとつしない。峰の我が家にじっとこもるほかない。
雪の日はなにより蕪村の句を読みたい。
うづみ火やわがかくれ家も雪の中
埋づみ火――炭火に灰をかぶせて埋めること。深い雪の中、蕪村は家にこもり火鉢に手をあぶりながら読書をしている。
雪折れやよし野の夢のさめる時
吉野山の桜に雪が積もる。やがて雪で枝が折れる。其の音に驚いて目が覚めた。―
フィクションを得意とする蕪村の世界だ。雪をかぶった枯れ木と満開の桜の比較は月並みだが、雪折れする音で我に返るという物語化。その巧みさ。
蕪村という人は、人生的にゆきなやむことが多かったようだ。しばしば「愁い」という言葉が出てくる。そのあまさに私は惹かれるのだが。この愁いをセンチメントに置き換えたいという誘惑にいつもかられる。
定年とは昔風に言えば隠居の身になったことだ。私も蕪村の境地にすこしは近づけるかな。
まあ無理なこと。だから、せめて猿真似だけでもしてみたい。
雪の日や蕪村の発句を口ずさみ
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