定年再出発 |
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女と戦争③
清水鶴子さんの本当の苦労は戦後だった。終戦後まもなく弟が宮古島で戦病死したということが伝わる。 戦地に行った夫からは何の連絡も入らない。やがて、義弟から東京へ来ていっしょに住まないかと誘いをうけ、鶴子さんは娘ユリコの手を引いて上京した。世田谷に住むことになる。 ある日、夫の部下だった兵隊から手紙が届いた。それによれば、夫弘は昭和20年3月、ルソン島バタンガス峠の戦闘で迫撃砲弾を受け戦死したとあった。1ヵ月後、戦死の公報が入り慰霊祭をやるから増上寺まで来るようにと知らせてきた。 当日、鶴子さんはユリコの手を引いて参列した。蝉しぐれの中で、「陸軍主計中尉、清水弘之霊」という遺骨箱を受け取る。箱を揺するとかさこそと音がした。 帰宅して箱を開けると白木の位牌が一つあるだけだった。遺骨はおろか現地の土すらなかった。鶴子さんは庭に出てその箱をたたきこわしてから火をつけた。《その煙の行方を、ぼんやりと放心したように見つめていた。白い細いひとすじの煙は、段々と薄くなって、遂に消えた。》 昭和32年春、弘は英霊として靖国神社に合祀されたが、鶴子さんは夫を自分の元に取り戻したいと願っていた。いつか夫の墓を建てたいと年金をこつこつ貯めていた鶴子さんだが、法は冷たかった。「戦死して遺骨のない者には、埋葬許可もでないししたがって墓地の分譲もできない」と拒否されたのだ。 その鶴子さんに私は何かしてあげたかった。せめて弘の戦死の状況だけでもきちんと教えてあげられないものかと厚生省援護局で彼の戦歴を何日もかけて調べた。海上挺身基地第14大隊ということが分かった。東北出身者を中心とする部隊であった。そこの生還者を追った。当時准尉だった人物鎌田さんが仙台にいることがわかり連絡をとった。銀行の監査役をしている鎌田さんは近々上京するということで私は約束をとりつけた。 鎌田さんはホテルニューオータニでのパーティに出席するので、その合間なら会ってもいいということだった。当日、私は鶴子さんをオータニへ連れて行った。戦友に会えるということで鶴子さんもいつもと違って緊張していた。 パーティ会場をぬけてきた鎌田さんと鶴子さんはエレベーターホールの前で会った。当時まだ取材力がなかった私は、このままエレベーターに乗りこんで会話が続くと予想していない。二人は挨拶もそこそこに場所を移そうとエレベーターに乗り込んでしまった。ずっと録音機のテープは回っている。鎌田さんは突然清水中尉の戦死の状況を話し始めた。鶴子さんは言葉を失うが時折あいづちをうつ。声が震えている。清水弘の最後の言葉は「どうぞ皆さんがんばってください」ということを鎌田さんは鶴子さんに告げた。鶴子さんは手を堅く握り締めて鎌田さんの言葉を聞いていた。 後刻、テープを再生して愕然とした。肝心のエレベーターの中の会話はエレベーター音が邪魔をしてほとんど聞き取れないのだ。これはテレビではなくラジオ番組なのだ。音が録れていなければまったく表現できない。今なら取材のための状況を判断するだろう。エレベーター使用はひとまず回避して二人の出会いを収録する手立てを考えるだろう。 私はプロデューサーからひどく叱られた。 だが、鶴子さんからは深く感謝された。ずっと心にひっかっていた弘の最期を知ることができて、胸のつかえの一つがとれた気がすると素直に喜んでくれた。 番組が放送されて以降も、清水鶴子さんとの交友は続いた。時折、銀座の三笠会館や資生堂などへ私を連れて行ってくれてご馳走してくれた。その折でも、いつもこの戦友との出会いのエピソードを思い出して、私の助力を大いにに評価してくれ礼を述べられた。 来られた記念に下のランキングをクリックして行ってくれませんか ![]()
by yamato-y
| 2006-01-04 21:43
| シリーズ作品回顧
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Comments(2)
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祖母の本を読んで頂き、ありがとうございます。本当に運命が変わってしまった事を80歳の時、3月の朝にトイレの入り口で心臓発作で誰もみていない時に祖母は、1人逝ってしまいました。まだ温かったので「おばあちゃん」と何度も叫び、パニックになりました。でも一生愛し抜き再婚もしなかった祖母は、やっとヒロシ祖父に逢いに旅立てたのだとも思えます。
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先の文章が変でした。「本当に運命が変わってしまった、死ぬまでの80歳まで聴いていました。」が正しいです。失礼しました。
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