焚き火の煙
宗匠が二,三度手紙を書いたが音信なし。何かがあったと思ったが宗匠は確かめる術をもたない。やきもきするうち1年経ち2年経った。
ある日、女房の身内という者から宗匠へ手紙が届いた。長い間、故人と交わりをいただきかたじけない親切に一同感謝していると書かれてあった。
思いがけない訃音。宗匠、さらに読みすすめる。――
女房は先年流行病(はやりやまい)のため突然死んだ。若くして未亡人となって以来、一人息子を一生懸命育て上げてきた律義者。ようやく息子も一人前となり、これで肩の荷をおろしこれからが人生と思っていた矢先の不幸だった。さぞやさみしい人生であったと、親戚一同言い合っていた。
先ごろ、3回忌をむかえ追善供養がにぎにぎしく行われた。そのおり、故人が大切にしていた文箱があけられた。中からあなた様のお手紙のみ出てまいりました故、こうしてご連絡申し上げる。というようなことが文面に縷縷述べられていた。
読み終えた宗匠、手紙をもって庭先へ。やおら折りたく柴の中へ手紙を入れ火をつける。うす青い煙りはまっすぐ小春日和に消えてゆく。
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