前回のAさんに宛てて書いた手紙の文章を記念にここに残しておこうと思った。
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Aさん
秋冷の候、お元気ですか。
当方も健康だけは保っております。外郭の会社の軒先を借りてほそぼそと企画を出してやってきたPD暮らしもいよいよ雇い止めになりまして、この春から完全退職者としてほぼ毎日自宅の自室にいるような暮らしをやっております。お伝えしたかもしれませんが、数年前から大磯と目黒の二重暮らしを止めて、目黒一本にしました。ここを起点にして毎日歩いております。「御徒組」です。渋谷まで6200歩、池尻大橋まで7000歩、五反田、品川まで4000歩、三田まで6000歩、時には大手町7200歩、神保町8500歩をノルマにして右往左往しております。
コロナが始まりまして、めっきり人付き合いが減りました。Yさんも奥様を亡くして一人暮らしが不便となり川崎のマンションに移転され、会う機会が無くなりました。時折電話で消息を伺うような次第です。ということで再開されて動き出した美術館や歌舞伎座の催事も一人で行っております。昨日も日比谷の図書文化館で開かれている「江戸から東京へ・千代田の風景」展を見てきました。客は高齢者ばかりで静かで居心地は悪くありませんでした。この秋の最大の好事は東京美術倶楽部が催した「美のまなざし」展でした。さすが画商たちの展覧会ですから、実物のすぐ傍で鑑賞できまして、前から好きだった浦上玉堂の山水をじっくり見ることが出来ました。他に良寛や光琳の書や短冊があって贅沢なものでした。
山茶花が咲く時期になりました。冬に向います。コロナもまだ油断は出来ない様子です。くれぐれもご自愛ください。
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結局、この手紙はAさんに届かず、奥様から返事が来た。奥様はこの手紙をお位牌の前で大きな声で読んでくださったそうです。有難かった。それにしてもこの暮れは訃音が多い。少し淋しい秋です。
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