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定年再出発  


懐かしい空
by yamato-y
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ねむの木

ねむの木


夕方、残暑きびしいなか白金ラビリンスを縫って五反田に向かった。白金ラビリンスとは朝のウォーキングコースのひとつで、白金台の西端の崖線から五反田高台池田山の間にある谷間を指す。ここは5年前まで通った明治学院大学までの近道として入り込んだことがあって、方角である程度予想して分け入ったのだが、坂道と路地がいくつもあり完全に道を失ったことがある。谷間にはNTT関東病院の巨大な建物や池田山公園など目印となるものは少なくないのだが、いったん入り込むとまったく土地勘が効かない。そこで白金ラビリンス(迷宮)と私は名付けた。一か月前に痴呆の疑いが出たとき、医者から朝の30分運動を進められ、6つのコースを定めて実践してきたが、白金ラビリンスコースがその白眉のコースになっている。朝6時半、この谷間におりていくとき対面から朝日がある。遠く東京タワーが見える。右手の崖に池田山公園の緑が濃い。降りきるとNTT病院がある。そこから反対側の崖にあがり、やがて白金通りの裏道に入るというコースだ。住宅地で商店がなく朝は人っ子が見当たらず実に快適だ。実践して30日になろうとしているが、3回に1回はこのコースにしている。

そのコースを使って、夕方五反田の東急ストアに焼き鳥を買いに出かけた。5本入り380円のめちゃお得なつまみなのだ。大崎図書館の帰りにこのネタを見つけた。それが無性に食べたくなり、自宅から五反田駅までの最短を調べると、どうやら池田山越えだということが分かった。万歩計をセットして歩いた。1200歩、あるいて5分ほどで、お屋敷町に入る。たった800mの距離だ。その突き当りにオープンガーデン「ねむの木の庭」があった。閉園間際にすべりこんだ。庭の中央に大きな木がある。庭の係の人にこの木がねむですかと聞いた。そうだという。6月頃に花が咲くらしい。どんな花ですかと尋ねると、枝の先に薄赤く金色に光る羽のような花を指して、「これです」と言って教えてくれた。いつもの夏ならとっくに花は終わっているのだが、今年の長雨で花が残ったらしい。頭上2mの花を詳しくは見ることはできないが、その穏やかな薄紅色が夕日に映えて美しかった。

 この庭は美智子妃の実家の跡地だ。思ったほど広くない敷地の中央にそのねむの木はゆったりと葉を茂らせていた。

今、若き日の美智子妃の相談相手であった神谷美恵子のことを考えている最中だったので、この庭に出会ったのは僥倖であった。秋分の日の出来事である。

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by yamato-y | 2021-09-23 22:05 | Comments(2)
山登様
 初めまして、私は京都大学人間・環境学研究科共生人間学専攻の修士課程に所属する大学院生です。髙木佑透と申します。突然のご連絡をお許しください。

 昨年私は一本の映画を撮影しました。知的障害のある弟・壮真と、自分自身にカメラを向けたドキュメンタリー映画です。この映画は第40回「地方の時代」映像祭の学生部門で優秀賞を受賞し、多くの方々に支えられ、京都、大阪、神戸のミニシアターでの劇場公開も決定しました。その上映に向けて現在私は、学生からなる上映委員会を結成し、たくさんの魅力的な学生メンバーたちと共に配給・宣伝にも取り組んでおります。

 さて、そんな中で京大の文学部出身の学生委員より、山登さんのお話を聞きました。
その学生は山登さんの夏季集中講義を受講していたとのことでした。そこでは山登さんがかつて撮られた徐京植さんや大江健三郎さんのドキュメンタリーを観たとのことで、ドキュメンタリー撮影とは決して計画通りには進まず、必ず予期せぬことが起る。あるいは撮っているうちは分からないけれど、あとで見返せば往々にして発見が伴うものだ。そのような遊びを楽しむことも大きな醍醐味なのだというお話がずっと印象に残っているそうです。また大江健三郎さんの息子さんの話を山登さんがされていたことも覚えており、ぜひとも山登さんにこの映画を観て頂いたらどうだろうかと薦めてくれました。
(コメントが入りきらなかったため、続きを書かせていただきます。)
 私は京大の書評誌『綴葉』にて編集委員として書評を書いているのですが、「いのち」という特集にて、『障害者殺しの思想』『障害者の安楽死計画とホロコースト ナチスの忘れ去られた犯罪』と合わせて大江健三郎の『個人的な体験』を取り上げました。映画「僕とオトウト」も「確かにこれはぼく個人に限った、まったく個人的な体験」です。しかし私が相模原の事件以来もやもやとし続けてきた「障害とは何か」という問いを突き詰める上で、最も身近な弟と向き合い、その弟をまなざしている社会、そして自分自身を徹底的に見つめることは不可欠でした。
 その過程を閉じ込めた本作が障害とは特段縁のない人々にも観ていただけるのは、そのように自分と向き合う過程に共感していただいているのだと感じております。大江は『個人的な体験』の後書きで「ふたつのアスタリスク」のつづくシーンについて、「若い書き手としての必然性」があったと述べています。初めての映画作りであり、たくさんの稚拙な点もございますが、いまを生きる僕と弟だからこそ完成した本作はそのような必然性を少しでも帯びられていると考えております。

 そこで、今回ぜひ山登さんにこの映画をご覧頂き、感想を頂戴できればと思って、コメントいたしました。もしご連絡させていただけるようでしたら、「僕とオトウト」上映委員会のメールアドレス(bokutootouto@gmail.com)よりご連絡致します。
 面識もない中大変不躾なお願いとなり、申し訳ございません。何卒ご検討のほどよろしくお願い致します。
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