花の幻
広島、夕方4時。広島平和公園、国際会議場のロビーに立って比治山のほうを眺めている。
西日がさして影が長く伸びている。原民喜の言葉がよみがえる。
遠き日の石に刻み 砂に影おち
崩れ墜つ天地のまなか 一輪の花の幻
原については私は2本番組を作っている。1本は原の『夏の花』を読む番組だ。作家の小川国夫さんがテキストを朗読しながら、原の人生、作品を語っていく番組だった。このために、私は広島を訪れ原ゆかりの場所やものを撮影した。彼が逃げ延びた縮景園から太田川に出たところから船に乗って、水上シーンを撮った。水の都広島は美しかった。
もう一本は「永遠の緑・語り継ぐ一族」というドキュメンタリーだ。原の血縁が今も原爆の体験を語り継ごうと働いている姿を追った。原の一族は今でも8月6日には集まって原が作った「永遠のみどり」を合唱する。広島のデルタを緑で埋め尽くせという、原の祈りの詩である。
原が自ら命を絶ったのは、東京荻窪付近の鉄路だった。彼が死んで20年後に、私は荻窪に住んだ。その場を通ると、原を思った。よもや、その15年後に原の番組を作るとは思いもよらなかったが。
原民喜-栗原貞子-大江健三郎。私の中で一本につながる、ヒロシマ的作家たち。
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