お金の最小単位
今朝は晴れあがった。空が美しい。相模川の鉄橋を渡る時、振り返ると冠雪した富士があった。その上空をセスナがぽかんと浮かんで飛んでいた。
物心ついて以来、金の最小単位はずっと1円だ。ただ小学校1年のとき、50銭を身をもって感じたことがある。
家の近所に駄菓子屋テラサキがあった。昭和29年当時、箱に入ったキャラメルなどなく大きなガラス瓶の中に入ってバラで売られていた。私はコーヒーキャラメルが好きだった。初めて買いに行ったときのことだ。コーヒーキャラメルをおくれと声をかけると、店番の老婆が出てきて応対した。「はいよ。2個で1円、1個50銭」と答えた。
とまどった。私が握っていたのは5円玉。50銭などという貨幣などもっていない。もし3個買ったら、どんなお釣りがくるのか。一瞬、頭の中がぐらりと揺れた。
結局、10個買って釣りはなかったが、50銭という単位があることだけ生々しく記憶に残った。色黒の老婆は節くれだった手で瓶の中に手を突っ込んで、10個私の手においた。にやっと笑うと前の金歯が光った。そのまま薄暗い奥に消えた。
老婆の孫娘は私より2学年下だった。きゃしゃで色白なその娘が孫だということが、長く私の疑問となっていて、学校の帰りテラサキの店の前を通る時いつも思案した。
先日倫敦で買ったローマンコインが私の机の上にある。縁が欠けて中の肖像も半分潰れたコインを見ていたら、幻の50銭貨幣はこういうものかなと勝手に思った。
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