寒さきびしき句会かな
今年最初の句会が白金で行われ参加した。名門の社中ゆえ出句の一つ一つに厳しい目が注がれる。当日3句提出の義務はなかなか気が重いものがある。
だが昨年末以来、ずっと舌頭千転を繰り返して形にした3句を恐る恐る出してみた。豈はからんや、そのうちの一句は3票も入った。この日最高位は4票だから新人としてはかなり高い評価を頂いた。その句とは。
そのかみに彫(え)りしキトラの冬の星
20年前にスクープしたキトラ古墳内の天文図を詠んだ句だ。下のフレーズ、“キトラの冬の星”の調べがよいと評価された。発掘調査が行われたのもこの日のような大寒の厳しい日であった。おおぜいの関係者が見守るなかで、ファイバースコープが天井の天文図を捉えたときはまことに感動した。1000年も前に彫られたとは思えないあざやかな星群が楽し気に輝いた瞬間は今も眼裏に焼き付いている。
ビギナーズラックか、他の2句にも選が入った。
靴下の行方不知火肥後の海(くつしたのゆくえしらぬいひごのうみ)
調べは悪くないが季語がないのが画竜点睛を欠いたと減点された。靴下はてっきり冬の季語と勘違いしていたのだ。
荒星や地平すれすれ瞬くも
提出句は「地平すれすれに」字余りだったが、削ったほうがいいと満座の意見に沿って訂正。
この日の会で最高句になったのは次の句。
一椀の白湯におさまる淑気かな
見事な造形だ。“おさまる”が効いている。白湯(さゆ)も含めて字面もいい。私はこういう志向ではないが、鍛錬を経た人の技を見た。この句会では勉強になる言葉が飛び交う。本日も、「俳句は調べが命」石田波郷とか「女の心は煮凝(にこご)り」などメモしたくなる言葉が華麗に舞った。