先日、高校時代の友達と目白で会った。前会ったのは二十年前、最初にあったのが五十五年前。それほど体験が重なるわけではないが、会って話していると懐かしい感情がわき上がってくる。
五十五年前の金沢は夜は真っ暗だったな。久保市さんの鳥居の前に出ていた中華そば屋のアセチレンガス灯が唯一の明かりだった。坂を下りて浅野川に出れば、かぞえ町の茶屋街なのだが、少し離れると夜道は真っ暗だった。
下宿には風呂はないから週に3日ほど銭湯に行った。近所の四方に3つほど風呂やがあった。名前を忘れたが、浅野川大橋の橋詰めの交番の隣にこぎれいな風呂やがあった。夕方に行くと明るくて爽やかだが、10時を過ぎると、おとなの顔になっていた。当時、十九歳だったが、まだ酒の飲み方もスナックも焼き鳥屋も知らなかった。行ってみたいが、予算が分からず、怖じけて戸を開ける勇気もなかった。
しょっちゅう腹が減っていたから、何か食べたかったが、コンビニもない。あらかじめ夕方に隣のパンやで買ったバターパンを頬張るのが関の山だった。
2ねんせいになって、週末、友達の下宿へ行って、サントリーレッドを呑みながら、人生論を語り、女子の噂をして、友達の片思いを聞きながら、夜明けを迎える。かくもみじめなかつ楽苦しい「青春」だった。
おそらく他者から、今の私を見たら、そんな色恋の話など無縁の老人にしか見えないはず。だが、そうじゃないだぜって、ちょっと口にだしたい気分。
俳句の話をしよう。さっき、机の下から春に作った句のメモを発見。
たんぽぽをぽぽと吹けば恋成就
恋をするとみんなゲンをかつぎたくなるものだ。もう一つ、先週作った句
はぶられし少年秋のデッキを背に
日吉から乗った電車で見た光景。男子高校生3人。電車のデッキにいた。二人はこそこそ話しているが、一人は少し離れて、デッキを背中にして中吊り広告を見ている。背中のデッキの窓の外には秋の美しい夕景があるのに、それを見ることもなく。
ああ、昼から加賀の清酒「菊姫」を冷やで飲んでこれを書いている。しりめつれつじゃ。