花の影
今朝も目黒スポーツセンターのジムに行き一汗流した。終わって出てくるのが10時過ぎ。
朝の冷気は収まり、春の陽気がそこここに漂う。
ジムの建物から出ると石畳のヤードで、その端に朝倉文夫の彫像「花の影」がある。若い女性が両手を大きく挙げて太陽の恵みを受けるヌードだ。3年間、ずっと見てきたが飽きない。朝倉のとてつもない造形力、描写力に毎度感嘆している。四季いつも素晴らしいが、とりわけこの時期は興趣が深い。
この像から5段ほど下った園庭に大きなケヤキがあって、この彫像と同じ形で枝の腕を大空に向かって上げている。まるで両者は対のようだ。そのケヤキに青い新芽が吹き出し始めた。葉が茂ると枝振りが隠れて興趣が下がるのだが、この時期はまだ枝が美しく彫像との釣り合いがとれて見心地がよい。
このケヤキの奥が目黒川で今桜が満開となって、おおぜいの人で賑わう。その通りから少し引き込んだ場所に「花の影」とケヤキはあるから人混みもなくひっそりと鎮まり、この風景を独り占めできる。
それにしても、朝倉はこの女性ヌードに「花の影」と名付けたことに驚く。この作品はむろんオリジナルでなく原型はおそらくどこかの美術館でもあるに違いない。だが、コピーであれこの作品はここが一番。タイトル通りの造形となっている。
字面だけ見ると、花の影というのはあまいが、作品を置いて見ると納得する。大岡昇平の「花影」も重なる。
先日、朝倉の次女響子制作のブロンズ像をどこかで見かけて、なかなかの力量に感じ入ったが、場所がどこであったか思い出せなくてもどかしい。長女の朝倉摂は舞台造形家として知っていたが、次女は知らなかった。私が見たのは帽子をかぶった少女像。父ほどダイナミックさはなかったが、慎ましい風情が心にしみた。
彫刻家というのは親子の血筋は濃いのだろうか。朝倉文夫―響子から連想したのだが、高村光雲―光太郎、舟越保武―桂。佐藤忠良は娘がたしか女優だったはず。
美術の中で彫刻ほどあからさまなものはない。少しのずれ狂いがたちどころに作品の優劣を醸し出す。巨匠と言われる人の作品でも惨いものがいくつもある。いわんや美大生の作品はなかなか佳作に出会うことはない。おおよそ平和とか希望とか愛とか仁とか大仰な言葉の入った作品は碌なものがない。
谷中にある朝倉彫塑館に行ってみようかな。
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