マイフェボリットシングス――夕暮れ
夕暮れが好きだ。空いっぱいに紅に染める夕日、その最期に遭遇すると我が魂は千々に乱れ、上っ調子になっていく。夕暮れというのは時分を表す、夕焼けといえば空 を染める空間現象を指す、そういうこと以上を含みこんだ言葉として夕暮れ、西行の「しぎたつ沢の秋の夕暮れ」のような感じかな。この歌は長年住み慣れた大磯を舞台にして詠まれたものでなんとなく光景も目に浮かぶ。
だが今は目黒の街中に住んで、あれとは違う冬の夕暮れが好きになった。寒さが厳しい夕暮れに見る夕焼けはひときわ赤く雄大だ。
白金から目黒駅に向かって歩くと、正面に夕日が落ちていく。その光芒が空いっぱいに広がると、ちょうど向き合った2つの高層ビルのフレームで切り取られる。すると夕焼けがそれまで以上に美しくなる。あらためて絵における枠の重要さを知る。
残念なことに立ち止まって夕焼けに目を奪われる人は少ない。足早に家路を急ぐ勤め人ばかり。勿体ない。
春になると夕もやがかかって日没の“激しさ”、滾るような情熱が減少する。それはそれで春風駘蕩、悪くはないが、やはり冬の夕暮れが好きだ。そういえば、小林勇の「夕焼け」というエッセーが好きだった。すっかり忘れていた。昔読んだ頃は晩年の小林の心境など対岸の火事にしか見ていなかった。今読むと身につまされるのだろうか。読み返したいようなしたくないような。でも人生の掉尾に夕焼けを思うというのはセンチメンタルと分かっていても共感する。
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