だんだん寝坊になり、歩くことに命を賭けている。
昨日も歩いた。目黒から水道橋に出て、後楽園の入り口からまず神保町へ向かう。古書街をおよそ3時間歩きまわる。夕方になって、神保町から後楽園を経由して春日まで歩く。そこで南北線で王子まで。王子でも約束の時間より1時間早くついたので、飛鳥山あたりを散策。すこし雨がぱらぱらと来た。
駅までもどり、前に一度だけ行った居酒屋やまだやに入り込む。午後6時過ぎ。
店内はもうすっかり出来上がっていて、老老男女が長机のこっちとあっちに分かれて座り、熱燗、ハイボール、焼酎お湯割りをそれぞれ飲んでいる。ときどきとなりの人と口を聞いているので友達かなと思うと、話の流れから他人同士と知れる。
あっしも熱燗2合を頼む。肴はこはだ酢、これが田舎っぽい味でいい。次いでイカのリングフライ。アツアツがうまい。酒はすすむ。あまり飲むと、このあとの本席で酔った状態での参加にがなるから慎もうと思ってはいるのだが、手がさかづきを口に近づける。
ここんとこ、王子づいている。このひと月で3回も来た。駅前もこれといったものはないが、飲み屋のたたずまいが滅法いい。
そして、7時になったところで、本席へ移動。これが王子には不似合いなおしゃれなスタンド割烹。料理も美しく盛り付けがされていて、酒も福島の銘酒が添えられる。さきほどまでのヤマダヤと天と地ほど違う。ここでも御酒をしっかりいただき半酩酊。帰りにもう一軒寄って、京浜東北線に乗ったのは11時。中里、鴬谷、日暮里と町の灯をちらちら眺めて品川へ。山手線に乗り換え、本拠地目黒到着。時計の針はほぼてっぺん。
そのころになって、昼間神保町で見かけた吉野弘の初期の詩集(1500円)を買っておけばよかったと後悔しきり。立ち読みでさーっと読んだだけだが、たしか、エホバの証人の聖書訪問販売の若い女性を描いた作品が妙に心に残る。吉野さんの作品は一通り読んだつもりでいたが、まだ知らない作品があるのだと知った。驚いたのは表紙のウラに載った吉野さんの40歳ぐらいのときの肖像。痩せて鶴のような吉野さんばかり見てきたので、ころころ太っているのは珍しい。
ついでにその詩集のウラの戸棚にあった半藤一利さんの荷風伝の冒頭の一章も思い出した。荷風は生前口癖のようにして「ぽっくり死にたいね」といったとか。誰だってそう思うだろうが、荷風はその通りになったと半藤さんは書いている。
うまくやったなあと舌打ちして、悪態をついてみたいオイラ。本日の歩数、21000歩。