絵本作家かこさとしさん
今夜の「プロフェショナル」は魂に響いた。末期のかこさとしさんの生き方を描いた作品である。本年春先にかこさんの訃音を知っていたが、そのお悔みを兼ねた追悼番組かと思っていると、冒頭にテロップで、「この番組は追悼番組ではない」とえらく挑戦的な物言いから始まった。
実際、映像は死相の出たかこさんの最後の苦闘を描いている。単に故人の業績を称揚して供養にしようという考えは、制作者もかこさんの長女も微塵もない。その覚悟はよく分かったが、それにしても伴侶よりもというか伴侶を差し置いて娘が父の末期の面倒を見るという構図が気になった。例えば名前テロップでも長女はいち早く紹介されたが、そこにいる妻は何も言及されない。何かあるのかと勘繰りたくなった。同業の深読みであろうか。
かこさんとは同郷だから親近感は昔からあった。そして15年ほど前絵本のドキュメンタリーを作ったとき、絵本作家3人のひとりとして登場してもらったことがあるが、絵本制作に向かうかこさんの真摯な態度に感動したことを思い出した。そのときかこさんの来歴をリサーチしたのだが、かこさんの戦争観はなかなか複雑であった。今回はとてもシンプルに語られて、いささか表現がアバウト(単調)ではないかと、せっかくの作品を惜しんだ。
番組後半で次作の絵本について相談するシーンで、かこさんの呼吸が突然変化したとき衝撃を受けた。まさにわたしは息を呑んだ。かこさんの呼吸が下顎呼吸(open-mouth breathing)に変わったからだ。死の間際の人が行う呼吸ーー。
ああこの偉大な絵本作家がまもなく世を去るかと思うと、いたたまれない気持ちになった。おそらく、視聴者にこういう思いを残すかもしれないと制作者は考えたにちがいない。だから最終章で人間の生命の設計図のエピソードをさりげなくだが深い思いをこめて制作者は置いておいたのだろう。
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