日傘のぴんこちゃん
今朝、久しぶりにぴんこちゃんに会った。朝から気温がぐんぐん上がるなか、ぴんこちゃんは黄色のサマースェーター、水色のスカートそして片手に日傘を持って目黒通りを堂々とぴんこぴんこ歩いていた。脳性まひの後遺症だろうと推測するが、体半分が不自由になっていて、片側を軸にバランスをとっている。だから歩行がままならず大きく体を揺らして歩く。一度、澁谷駅前の大交差点で信号待ちのぴんこちゃんを見かけたとき、ぴんこちゃんは体を休めるためか、側道の電柱に体を預けていた。100米歩くのだけでも相当負担があるにちがいないが、そういうことにめげず、雨の日も嵐の日も、晴れた暑い日もぴんこちゃんは一歩一歩歩く。
私だけが知っているのであって、ぴんこちゃんは私の存在など知らない。健気でおしゃれで頑張りやのぴんこちゃんにいつか声をかけて友達になりたいが、20代の女子に70のおっさん(客観的には爺さんか)がナンパするのも気がひけて、まだ口をきいたことがない。
4年ほど前、まだ仕事場に行っていた頃、あるとき気分が滅入っていてむしゃくしゃしていた。すると前をぴんこちゃんが懸命に歩いて家路に向かう姿が見えた。なんだか胸に熱いものを感じた。権之助坂の夕日がひときわ赤く燃えた日のことだ。
ぴんこちゃんとすれ違った後、私は白金の自然教育園の森に行った。松平讃岐守の下屋敷後が広大な武蔵野になっていて国立の自然公園。料金は65以上は無料で、ときどき樹木や草花に会いたくなるとやってくる。自宅から5分ほどにあるから便利。
初夏の園内、薄紫の花が目についた。のはなしょうぶ、くさふじ、名の知れない草花、いずれも6月の花の色に相応しい「淡さ」に好感をもった。
林間で読書に最適のシーズン。奥の休憩ゾーンのベンチに寝転がって、昨日購入した新書『日本軍兵士』(吉田裕著、中公新書)の序章と1章を読む。今この本が売れていると聞いて奇異な気がしたが、読み進めると納得。語り口が秀逸、あの戦争を取り扱う切り口が斬新、なにより文章が簡明で読みやすいのだ。
1例。15年戦争で日本軍兵士が死んでいった理由のひとつとして、虫歯があったことを著者は丁寧に説明する。意外な事実だが、読むうちにその論旨に次第に賛同していくように持っていかれる。
そして内務班のなかで起きた陰惨な出来事。最近話題となる日大アメフトのコーチという古参兵のイジメと同じ構図いうか、あの戦争が敗北に終わったとき、こういう過ちを二度と起こさないと誓ったはずだが、またもや亡霊が甦ったと苦い思いにとらわれる。それにしても、あの大学の理事長、学長、理事、ヘッドコーチの面々。まるでたけしの「アウトレッジ」に出てくるままの悪相だ。
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