朝倉文夫の「花の影」
毎朝通うスポーツジムの前に大空に向かって両手をいっぱい広げた少女のブロンズ像が立っている。明治期の彫刻家朝倉文夫の作品だ。一年中立っているが、冬のこの時期が一番美しいと私は考えている。広げた両手の先に冬の大粒の光が注ぐのだ。美しい。朝倉文夫という人の底知れぬ才能を思い知らされる。
先日降った雪が日陰に残っている。消え難ての雪というやつだ。土が混じって薄汚くなって白銀の面影はなくなっているが、何か健気なものを感じてこの雪泥が捨てがたい。
花壇には春に先駆けて、葉牡丹、シクラメン、すみれが咲きほこっている。雪泥と格段の華やかさだが、それほど羨ましいとは思えない。いやそう思っているのは私であって、雪泥はどうなんだろう。
大雪から5日ほど晴れ間が続いたが、今夜からまた降雪となるらしい。すると、雪泥はたちまち生気を取り戻し、春花はすべて萎れることになるのだろうか。