波の音
クリスマスの日だが、赤坂でちょっとした仕事があって出かけた。この半年ずっと関わっているヴァイオリニスト若林暢の録音版の確認作業だ。乃木坂のレコード会社の立派なスタジオで、1986年に暢さんが録音したカセット、6ミリテープの作品を試聴した。え演奏はとてつもなく理知的で情感あふれたもので、素人の私でもその音楽に魅了された。
長年、テレビでメシを食って来たから、今のテレビ番組のテイタラクが口惜しい。なんとかならないのだろうか。
一昨日、敬愛する先輩から電話をもらった。先日、久しぶりに自由が丘で飲んだときに先輩がふともらした話題のその後について報告してくれたのだ。
先輩は40年前にテレビ聾唖教室のような番組を担当したことがある。その時の交流が今も残っているのだが、ある日、その仲間から連絡が入った。
その女の子は3歳のときに病気で聴力をなくした。利発な子で、すぐに手話や口話でコミニュケーションができるようになった。それで生きてきた。
ところが近年テクノロジーの発達で、耳に手術を施せば聴力が甦ることも可能になった。そこで、彼女の周囲が手術を薦めることもあって、そのことに臨んだのだ。
手術は無事終わったものの、最初の2、3ヶ月は不安と緊張のなかにあったという。彼女は飛び込んで来る音に戸惑って、「こんな分けの分からない何かにかき乱されるのは嫌だ」とつよく拒否したそうだ。しかし、時間とともにその「ノイズ」にも少しずつ馴れた。
12月の初め、彼女は用事があって鎌倉森戸海岸へ出かけた。用件をすませた後、海を見ることにした。季節外れの浜辺には人はまばらで彼女の目の前には大きな太平洋が広がっていた。そこで、波の音と初めて接触した。最初は、うるさいノイズでしかなかったが、しばらく立つと音の「規則性」のようなものに耳を集中していく。すると、波が雑音でなく何か懐かしいような響きに変わっていったことを自覚したというのだ。
この彼女の心の動きを、映像化したい。表現したい。
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