悪い時代っていつだ
ミシマが死んで35年、今書店に行くと、ミシマ関係の書籍が目に付く。
そのひとつに写真家の森山大道が、ミシマの思い出を書いていた。
そこに気になることを書いていた。
1968年、新宿騒乱事件がおきたとき、森山は渦中にあって夢中でシャッターを切った。
歌舞伎町の飲食店の従業員が学生たちを袋叩きにしているのを見て、ショックを受ける。
いわば昨日のお客さんを今日足蹴にしていたのだ。森山は悪い時代になったなあと思った。
その2年後の1970年、ミシマは市谷へ突入し自裁する。
森山の中には暗然たる思いはますます深まったにちがいあるまい。
辻邦生も『のちの思いに』で、師渡辺一夫の”絶望”について書いている。
昭和25年、1950年ごろ、渡辺は悪い時代になったと鬱屈していた。辻はそう記している。
戦時中あの暗い時代を狂気すれすれで生き延びたはずの渡辺がもらす絶望。
冷戦の深刻化,日本も逆コースの道をひたひたと走り始めた。何かが渡辺を苦しめたと思われる。
ところが、渡辺、森山が嘆いた時代の後を見てみると、
朝鮮戦争特需などで日本経済復興、国際化の波にのりエコノミックアニマルへ
一気に進む、といった好景気が待ち受けている。
その好況感のなかで、日本人は絶望どころか浮かれ踊ることになっていったのだ。
今また、悪い時代になったと嘆く声が多いが、その声をいっとき控えて意地悪く上目遣いで
時代を見ていこう。嘆きが中空で切れ切れとなって雲散霧消して、ノーテンキでゴショーラクな
時代を招き寄せないためにも。
だが憲法改正論議だけは、予断を許さない。
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