夜寒かな
11月も終わる。今年も残り少なくなった。なかなか進まないようで日は動いている。
夜寒は秋の季語だから、今の宵寒とはあっていないかもしれないが、今夜はなんとなく夜寒といいたい。
波郷の句にこういうのがあった。
遥かなるものばかりなる夜寒かな
こんな時期は過ぎ去った昔が懐かしくなるもの。このところ、昔の知人からの音信が届くこともあって昔懐かしい。
話は違うけど。レンタルビデオで「ソロモンの偽証/前後篇」を見た。宮部みゆきの原作だから筋はそれなりに出来ているだろうがと、期待しないで見たら、なかなかの作品で驚いた。特に前編がいい。成島出という監督はなかなかの腕の人と見た。最近の日本映画は若者向けのふやけた恋話ばかりでつまらんと馬鹿にしていたら、こういう佳作もあるのだということを思い知る。
話は移るけど。半月前に京都へ行った。京都国立博物館で開催されていた「国宝展」を見に行ったのだが、やや期待外れ。せいぜい絵巻物のいくつかが目に残ったが、あとは教科書で見た事があるような「源頼朝」真影のような”普通”の作品ばかり。40分も待つほどのものじゃなかった。そこで祇園の中の画廊で行なわれていた「草間弥生展」を見て口直しとした。これがアタリ。草間はカボチャだけじゃねえと感心した。
そして3日前、乃木坂の新国立博物館で「安藤忠雄展」を見た。ここもすごい人ごみで、チケット売り場の前に300人ほど並んでいた。模型と設計図が並ぶだけの展示は期待外れ。でも大画面の映像はなかなかよかった。
小島政二郎の『私の好きな川柳』を読んでいたら、こんな句があった。
泣くと笑ふと二人飲む乳
双子の乳飲み子を描いた句なんだろうなあ。
先日の長旅のとき、朝のホームでこんなことがあった。特急しらさぎを待っていた。時間が来て、入線してきた。先頭でトビラが開くのを待った。開くと若い母親が乳飲み子をかかえて、片方の手にバギーを持っていた。その母の前に2歳ぐらいのオトコノ子が立っていた。危なっかしい足元でステップを降りようとしていた。私は思わずその子を抱いて、ホームに降ろした。あばらの骨とぬくもりを感じて、一瞬目眩がした。命というものを久しぶりに実感した。
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