藤沢文学の秘密
むずかしい言葉を使うわけでもないのに、心深く沁みる。
物語が面白く、ページを繰るのももどかしいほど、結末を知りたいと読者を焦がれさせる藤沢周平。稀代のストーリーテラーである。
時代小説のカタチをとっているが、藤沢文学の中身は実はとてもモダンなのだ。近代推理小説のエキスがきちんと注入されている。あの宮部みゆきも藤沢作品をミステリーとして読んで堪能していると記すほどだ。人物像も現代的魅力をもつ。「用心棒日月抄」の又七郎はサム・スペードかフィリップ・マーロウのような趣があると、常盤新平も書いている。
おそらく、映画それもハリウッドの影響も相当あるのではないか。場面転換のあざやかさ、構成の妙には舌をまく。
友情や夫婦愛などまともでは気恥ずかしくなるテーマを、時代小説というスタイルに仮託したのだろう。
あのうるさい中野孝次が「この作者は時代小説、すなわち昔の話という特権を利用して実に見事に描いてみせ、それが小説の魅力となっている」とほめちぎっている。
加えて、端正な風景描写は、藤沢が若い頃夢中になった俳句が大きな影響をあたえている。ミステリーで俳味があって、時代小説、このあたりが、まさに私の好みにぴったりだと思ってしまうのだ。
周平の筆あざやかに蝉しぐれ
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