百日紅
冷たい雨が白金キャンパスに降っている。真ん中にパレットゾーンと呼ばれる中央広場。今は第三限の授業中だから誰もいない。
とそこへ、リュックをしょった幸せ薄そうな女子がとぼとぼと本館に向かって歩いて來る。傘をさしていない。
その姿を5階の演習室の窓から私は見ている。女子は気がついていない。そんなこともあるだろう。誰にも見られていないと無防備になっていることも。実は思わぬ所から見られていることなんて。特にハイポジションは盲点だ。
キャンパスのパレットゾーンには20本ほどの百日紅(さるすべり)の並木がある。
7月には小ぶりの赤い花をつけた。夏休みに入る前のキャンパスは、はち切れそうな若さで沸騰していた。百日紅の花は何食わぬ顔でさわさわと風に揺れていた。
8月の終わりになると、花が散りはじめた。風が吹くと小さな花びらが粉雪のように舞った。
それでも今年の百日紅の花はひときわ長かった。飽きもせず、私は毎週金曜日百日紅の紅い花を見ていた。
百日紅可憐なままで秋となり
夏休みが終わって、秋学期が始まっても花は残っていた。10月に入ってようやく花は散り、青い小さな実が枝先にぶら下がった。
この頃になって、なんで百日紅という漢字で記すか、分かった。
花が長いのだ。7月末から9月末まで、およそ百日。百日の間、紅い花が静かに咲いていたのだ。
こんなことを思いながら、金曜日第3限の演習室に私はひとりで居る。本日は、受講生全員ロケに出ている。ロケの第1日目だ。私はひとりで演習室にいて、みんなの帰りを待っている。
半袖か長袖にするか秋雨
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