箱根の折口信夫
ときどき大磯駅で歌人の岡野弘彦さんを見かける。お年はいくらかめされたが、眼光は鋭い。
敬して私は遠ざかっている。
岡野さんは戦後の一時期折口信夫と箱根で暮らしていたことを思い出した。最晩年の折口の身の回りの世話をしていたはずだ。戦争で国は滅び息子春洋を硫黄島で失い、折口は失意の日々だった。
折口という人は女性的な身のこなしとうらはらに、衣のしたには頑健な肉体があったということをどこかで読んだ。国学院や慶応で教えていた頃はさっそうとしていた。柳田國男と並んでも堂々としていた。
その面影が、箱根時代にはない。
当時を写したピンぼけのスナップが残っている。千石原での折口という。カメラに向けて笑顔を見せてはいるが淋しい笑いだ。なにより髪がぼさぼさであることが気になる。あれほど几帳面だった人物とは思えない。晩年の肖像と聞けば、胸が塞がる。
来られた記念にランキングをクリックして行ってくれませんか
人気blogランキング