葉祥明さんとの旅を思い出した
今朝はKO病院へ行くため7時前に家を出た。
森の中には黄金の光がふりそそいでいた。通いなれたこの道も朝早いとこれほど荘厳な姿を見せるということを、知らなかった。
昨日見た江ノ島は見えないが、そのあたりの海は朝の光に溢れている。
朝の光は黄金です、天国の門が開いています、と教えてくれたのは絵本作家で詩人の葉祥明さん。7年前になるが、「世界わが心の旅」で葉さんといっしょにイタリア、アッシジを訪ねる旅に出たことがある。この旅については一度で書ききれないほどいろいろなことがあった。少しずつ書いていこう。今回は朝の光について。
旅には葉さんの弟葉山さんも同行した。二人は私と同世代だが、ピュアな思いを持ちつづける不思議な兄弟だ。
旅の最初に北イタリアのサルメデ村へ行った。ここは絵本の世界的な賞を設けていて、毎年表彰式を開いていて、絵本作家の憧れの地だ。葉さんも数年前受賞している。
その村を訪ねるために、成田からパリ経由ベネツィアに入り、そこから車でサルメデに向かった。
夜10時過ぎベネツィアに到着すると冷たい雨が降っていた。10月の末で秋が深まっていた。サルメデでは旅籠と呼びたいような小さなホテルに泊まった。
翌朝ホテルのダイニングで熱いカフェオレとクロワッサンを食していると、トレンチコートで身を包んだ葉兄弟が外からもどってきた。朝の散歩に出かけていたらしい。白い息を吐きながら「朝の光が素晴らしいですよ。天国の門が開いています」と、二人は興奮していた。
撮影できる準備をして葉さんたちの後を追った。路地を抜けると村はずれに木橋があった。川はあふれるほど水量があった。水源は遥か遠くに見えるアルプスだ。その橋から先に収穫を終えた田園が広がっていた。土手に並ぶ並木は朝の光を浴びて赤や黄の葉っぱを翻している。肥沃な黒い土には朝露が光る。広い道がないから車は通らない。小鳥がせわしく囀っている。空の青さが幾層にもなって輝く。まことに美しい風景だった。だが天国というのは言い過ぎじゃないの、葉さんて面白い人だな、と思った。
旅からもどって何年経っても、あの葉さんの言葉が気になっていた。あの時、あーは思ったものの、あの風景が目に焼き付いて離れない。折にふれて思い出すことすらある。
今朝、紅葉山の朝の風景を見て、「ああそうだ、サルメデの田園はやはり天国だった」と感じた。瞬間天国を見せてくれたのだと悟った。「フランダースの犬」の少年が一瞬ルーベンスの画を見ることができたように。馬鹿なことと言われそうだが、今朝の風景を見ていて突然そう思ったのだ。
葉さんとの旅はこの後も不思議なことが続いた。山の上の修道院で突然雪が降り始めた。アッシジの霧の中から突如教会が姿を現した。いろいろあったが少しずつ思い出しながら、サルメデからイタリア半島を南下してラベンナ、ペルージャ、アッシジに至るまでを書いていこう。
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