ETV特集「島クトゥバで語る戦世」
昨夜見たETV特集「島クトゥバで語る戦世」は心に残った。この番組のデスクとは以前広島でいっしょに仕事をした仲だ。彼から見てほしいという連絡もあって見たのだが腹にドスンと落ちた。彼は大切な仕事をしていると思い嬉しかった。
主人公は沖縄読谷村に住む写真家・比嘉豊光と郷土史家・村山友江。
昭和20年、一般の市民を含む10万人が犠牲になった沖縄での地上戦。そこで何が起きたかはいまだに不明なことがかずかずある。多くの沖縄の体験者は口をつぐんだまま60年が経ってしまった。沈黙、寡黙をいいことに、その戦争の事実を都合よくまとめようとする動きがあることは以前書いた。
主人公たちが始めた「琉球弧を記録する会」は、戦争のみならず琉球弧に伝わる言葉と文化を記録に残そうと、特に映像に残そうと1997年に生まれた。この「聞き書き」の特徴はシマクトゥバ(方言)でオバァ、オジィたちの証言を映像で記録していることだ。
戦後60年間、これまでも沖縄の証言を採取しようという運動も努力もあった。だが、どうしても沈黙の中に沈み込む部分があったのだ。それは、戦前方言を停止させられ共通語を強要された沖縄の住民にとって、共通語では語れない表せない部分があるからだ。
人は言葉を作るのはなく、言葉が人を作る。この重い事実を探り当てた主人公たちは活動をはじめたのだ。ここで語られる証言、歴史は大文字の歴史から欠落している部分、まさに以前このブログでも触れた「歴史のヘテロロジー」と地下で結ばれていく。
番組は、比嘉たちの聞き取りを追いかけながら、老人たちがシマクトゥバで語る沖縄戦の実相と、シマクトゥバの世界を描いている。90分。いささか長くもあり、短くも感じた。
再放送をのぞむところであるし、見逃した人はその折にぜひご覧いただきたい。
一つ心に残った挿話。名護の老人はシマクトゥバでは証言しないと、カメラの前で言う。
戦前は共通語を使えと強制され、今はシマクトゥバで証言しろと言われる。そんな簡単に「ご都合」では語れないと言う。深いしわを刻んだ老人の生真面目な声音が長く耳朶に残った。
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