便所掃除
本日から出勤することもなく実質の天下の素浪人生活だ。朝も7時半に起きて、ジムへ行く準備をする。8時半家を出てジムへ。到着してリュックを探ると家にトレーニングシューズを忘れてきたことに気づく。あちゃあ。いったん家に戻ると1時間のロスタイムが生じる。出ばなを挫かれてやる気をなくし、とぼとぼと帰宅。
家ではちょうど朝食。2日前から大阪から来ている娘夫婦がおいしいおいしいと煮物を食べている。今朝のジム行きが失敗したことを冷やかされて憮然とする。
定年の定年ということで、一応家族が集まってお祝いをしてくれるということで娘夫婦や息子があつまってお祝い会を行ってくれたのが日曜日。一応お疲れさんとねぎらいの言葉を家族からもらうものの、コレから毎日どうするのと厳しい質問が子どもから飛ぶ。子供といってもおっさんとおばさんだが。まあ朝一番でスポーツジムへ行って、10時に帰ってからアイパッドでネットを眺めて、午後は公立図書館でぶらぶら読みでもして、あとは晩酌でもするぐらいの日課かなとふざけて応えると、娘がきっとなって私を睨みつけた。
「そんなことをしたら、すぐボケるわ。ボケたら周りが迷惑。規律ある生活を確立するように」と生活指導のいやなおばちゃん先生みたいなことを言う。そして、案の定怖れていた親父ボケ予防の対策案をとうとうと語り始めた。
「あ、そうだいい考えがある。私も実行しているが便所掃除の毎日励行がいい。あとで掃除のやり方を私が教えるから、メモ帳を持ってトイレまで来るように」とのたまうではないか。
冗談じゃない。せっかく手に入れた人生の夕暮れ。便所掃除なんかに潰されてたまるか、即反論した。「俺もときどき便器をふいたり、便壺を洗ったりしているぜ。別に教えてもらう事なんかないよ」。
「だめ。小手先だけの便所掃除では意味がない。一日の生活リズムがしっかり立つような理にかなった便所掃除。その見本を私が見せてあげるから、メモ帳を持ってトイレの前に集合」と指示が出た。ほかの家族は誰も私への助け舟を出さず、黙ってみそ汁をすすっている。
娘ははりきっている。
「まずベン壺から。洗剤はLOOK。これで便器の縁をしっかりこそぎ落とす。次にウタマロクリーナーで上側の蓋などを拭き取る。ウタマロを縁に直接吹き付けてティッシュで拭き取る。そのティッシュは洗い流す。」さらに重要なのは便器周辺の環境保全だと娘はえらそうに言う。「床もウタマロを吹き付けキッチンペーパーで拭き取る。ただしこのペーパーは便器に流してはいけない。便器周りの壁、腰板にたまっているほこりをきれいに取る。この一連の作業をお父さんはお母さんに代わって毎日やるべし。そうすれば運気も上がって、輝かしい未来が待っていることでしょう」娘は自分の言葉に酔ったのかうっとりしている。
しゃくに触るが、この説明を私はしっかりノートに書き取った。明日からちょっとやってみようか、それで幸運がやって来るならおやすい御用だ。でも、毎日というノルマにどれぐらい耐えられるか。宮仕えを終え気ままな素浪人生活が来ると思っていたが、当初から予想が大幅にずれ始めている。
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