もみじ山、ツヴァイクの道
旅に出ていた。大磯へ帰ってきてもみじ山を登り我が家へ向かう。
ツヴァイクの道を抜けていくと、蝉の死骸が点々とあった。腹を空に向けて傲然と死んでいる。
眼もつやつやして美しいミイラのようだ。落ち蝉というとどこか悲しげだが満更そうでもない。およそ死という不浄なものではなく、まさに「形骸化」というさっぱりしたものだ。

土曜の昼下がり、森には誰もいない。奥に入って木々のこずえをながめる。かすかに揺れている。風のせいではない。樹が自ら揺れている。
そうだ。樹は地中から水を吸い上げている。外見静かだが、樹の内側では凄まじい運動がある。

揚羽蝶がゆっくり私の前を飛んでいく。まもなく彼女の季節も終わる。やがて零落して、おんぼろ蝶に変わっていくだろう。その前の、わずかに残された優雅な時間。
晩夏の森には濃密なものがあった。
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