忘れられない人、忘れてはいけない人
幻のピアニスト、守安祥太郎を書きながらもう一人のことが頭に浮かんでいた。
守安のように自裁したのではないが、やはり40歳前に病死した大伴昌司のことだ。
ウルトラマンの中の怪獣たち-例えばバルタン星人、をデザインし創造した男だ。メディア界の鬼才と言われていた。一部の人には知られてはいたが、長く無名の存在だった。
彼が亡くなって15年ほど経って、私が彼の人生をディレクターとして取材し番組に作り上げた。
「少年誌ブームを作った男」という地味な作品だったが、これを契機に彼の仕事、業績が注目されていき、今では「オタク」たちの中ではよく知られた人物となった。これは私の誇りでもある。
ほぼ、守安も大伴も年齢は同じだろう。慶応で学んだことといい、良家の子弟であったことなど共通するところは多い。二人ともある意味で天才だった。
大伴は「少年マガジン」の巻頭グラビアを作り上げた。子供向けの雑誌にしては、高度なテーマと手法を用いた特集で、出版界では驚きの目で見られた。一方、SFやコマーシャルフィルムなどを愛し、その発展におおいに力を尽くした。
彼は偏屈で知られていて天涯孤独だと周囲から思われていた。SF作家クラブの忘年会で彼が倒れたときも、身元引き受ける人物がなく、小松左京氏がとりあえず親族の代理として
警察からもらいうけた。
自宅へ運び込むと、隣家の老女性が母ですと名乗った。一同唖然とした。親の隣に住みながら、誰も係累がない人物と思わせた、大伴のダンディな生きかた――。
草創期のテレビ界でシナリオを書き、少年誌でグラフィックデザイナーとして辣腕を奮い、
SF小説の世界では評論家として活躍した、今でいうマルチ人間、大伴昌司。
圭角のある性で、彼への評価は毀誉褒貶、極端だ。彼もまた、自分の本心を明かすことなく、生き急いで去った。彼の墓碑銘「天空の彼方、ウルトラ星へ旅たつ」
この二人の人生をもう一度噛みしめてみたい。それにしても、なぜ、私は若くして逝った人物にこれほど惹かれるのだろうか…。
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